2011年05月20日

謎の集団

「これで、いいっすか?」

彼は、小走りにやって来て

ポケットから 小銭を取り出し

小銭と煙草を おっちゃんに渡した。

「おうっサンキュー!これで、ジュースでも飲みぃや」

男は いつもの如く、チップを貰い 礼を言った。

実をいうと このおっちゃんは ただの客ではない。

このお店には プロと噂されている客が、数名いて

このおっちゃんも その中の一人である。
そして それらの人は お店から

出したコインの数量を制限されていた。
男は この店に勤めて一年近くなるので

この謎の集団の事は もちろん良く知っていた。


だが、彼も高校の頃から

パチンコやアレンジボールを 打っていた訳で


学校を卒業してからは


日に、サラリーマンの日当程度は稼いでいた。

だが、このスロットは


数回打った事はあったが

パチンコと違い、機械の作りやゲーム性を考えると


勝てる要素が、まったく無いように思えた。


確かに 彼は このお店の常連である友人数名から

このお店のスロットコーナーには

何かしらの方法で、絵柄を並べて

毎日、稼いでいる連中がいるらしいという噂は良く聞いていた。

実際、彼等従業員は、スロットコーナの店長から

この集団のコインの計量は  続きを読む


2011年05月17日

序章

「にいちゃん 煙草買って来てくれへんか?」

小綺麗なダボダボの
作業着を着たおっちゃんが

吸いきったセブンスターの空箱を

両手で捻りながら言った。

「はい セブンスターですね?」

今でも 従業員がここまでのサービスを
する事などないと思うが

もちろん その当時も同じである。

ただ、この男の場合は

出来る限りトラブルを 回避したいという
思いもあったが

一種の 悪賢い性格からくるものかも知れない。

客に嫌われて 嫌な思いをして働くより

出来たら 好かれて
気分良く働いた方が
よっぽど得だと思っていたのである。


昭和55年  沖縄ーー


だから 機械のトラブルで、呼ばれた場合
それを 直した後に中のコインを

数十枚取って、マシンの下皿へ

入れてあげていたのである。

普通、全国何処の遊技場でも

お店の規則として 機械のトラブルの場合は

トラブル解消後は コイン3枚程度のサービスと

ほとんどの店で、決められているものだ。

だが、男は 機械のトラブルの際には

必要以上のサービスをしてやり

客のある程度の我がままも

なるべく 聞く様にしていた。

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